更新日
スマホの睡眠計測は、医療機関で受ける検査ほど正確ではありません。スマホのアプリは脳波を測っていないので、深い睡眠やREM睡眠といった睡眠段階は、体の動きやタイミングから推定した値です。一方で、何時ごろ眠り何時ごろ起きたか、寝る時刻が日によってどれくらいばらついているかといった、大まかな傾向をつかむには役立ちます。
使い方のコツは、一晩の数字に一喜一憂せず、何日分かの流れを見ることです。そして、気になる不調があるときは、アプリの数字ではなく医師に相談することです。以下、その理由を順に説明します。
睡眠を正確に測る検査は何をしているのか
睡眠を医学的に測るときの基準は、終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)と呼ばれる検査です。病院や専門の施設に一晩泊まり、頭や顔、胸などにセンサーを付けて、脳波、眼球の動き、筋肉の活動、呼吸、血液中の酸素などを同時に記録します。深い睡眠やREM睡眠の判定は、主に脳波と眼球の動きにもとづいて行われます。
スマホの睡眠アプリには、こうしたセンサーがありません。マットレスの上に置いたスマホが感じ取れるのは、主に体の動きです。アプリによっては、マイクで音を拾ったり、スマートウォッチの心拍のデータを取り込んだりして手がかりを増やしますが、脳波を直接測っているわけではない点は同じです。
動きで睡眠を推定する方法の得意・不得意
体の動きから眠りを推定する方法は、腕時計型の機器(アクチグラフ)で長く研究されてきました。2019年に学術誌Sleep Medicine Reviewsに掲載されたシステマティックレビューとメタ分析では、96件の研究、のべ4,134人分のデータをまとめ、腕に付けたアクチグラフは終夜睡眠ポリグラフ検査に比べて、睡眠の時間を長めに、目が覚めている時間を短めに見積もる傾向があると報告しています。持病のある人のグループでは、総睡眠時間を平均で約22分長く見積もっていました。
理由は想像しやすいでしょう。動きで眠りを判断する方法は、じっと横になったまま起きている時間を「眠っている」と数えやすいのです。寝つけずに布団の中で静かにしていた夜ほど、記録上は実際よりよく眠れたように見えることがあります。
スマホを枕元やマットレスに置く方式は、腕に付ける機器ともまた条件が違います。寝返りの伝わり方は、マットレスの硬さや、隣に人やペットが寝ているかどうかでも変わります。同じ人でも、置く場所が変われば数字が変わることがあります。
専門家団体はどう見ているか
米国睡眠医学会(AASM)は2018年に、ウェアラブル機器やスマホアプリなど、一般向けに販売されている睡眠計測技術についての見解を発表しています。そこでは、十分な検証と米国食品医薬品局(FDA)の承認がないまま、こうした技術を睡眠障害の診断や治療に使うことはできない、としています。そのうえで、医師による適切な評価の中で使えば、患者と医師のやりとりを助ける可能性はあるとも述べています。
つまり、スマホの睡眠記録は「自分の夜を振り返るための材料」であり、「病気かどうかを判断する道具」ではない、というのが専門家の基本的な立場です。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」も、スマートフォンやウェアラブル端末の普及で自分の健康情報を手に入れやすくなったことに触れ、睡眠の把握にデジタル技術を活用していく方向を示していますが、それは診断の代わりという意味ではありません。
数字ごとの信頼度の目安
アプリに並ぶ数字は、すべて同じくらい当てになるわけではありません。おおまかには次のように考えておくと、読み違いが減ります。
- 寝た時刻と起きた時刻。 体の動きが大きく変わるので、比較的とらえやすい項目です。
- 合計の睡眠時間。 大まかな目安になりますが、静かに起きていた時間が含まれて長めに出ることがあります。
- 夜中に目が覚めた時間。 動かずに目覚めていると見落とされやすく、短めに出がちです。
- 深い睡眠、浅い睡眠、REMの割合。 脳波なしに推定するので、いちばん誤差の大きい項目です。一晩ごとの細かな増減は気にしすぎないほうがよいでしょう。
- 睡眠スコア。 アプリが独自の計算でまとめた値です。アプリが違えば計算方法も違うので、別のアプリの点数と比べても意味はあまりありません。
睡眠アプリを上手に使うコツ
数字の限界を知ったうえで使えば、睡眠アプリは十分に役に立ちます。
- 一晩ではなく一週間単位で見る。 一晩の数字はばらつきが大きく、複数の夜を並べたときに初めて傾向が見えます。
- 条件をそろえる。 スマホを置く場所、充電の有無、一緒に寝ている人やペットの有無など、毎晩なるべく同じにしておくと比較しやすくなります。
- 体の感覚と照らし合わせる。 朝のすっきり感や日中の眠気と、記録の傾向が合っているかを見ます。数字だけを正解にしないことが大切です。
- 習慣のメモと組み合わせる。 カフェイン、遅い食事、寝る前のスマホなど、その日の出来事を記録しておくと、どんな夜に寝る時刻が遅れがちかが見えてきます。
- 気になる症状は医師に相談する。 大きないびきや呼吸が止まっていると指摘された、日中に強い眠気が続くといった場合は、アプリの数字にかかわらず医療機関に相談してください。
Snoraの睡眠の記録
Snoraは、スマホの動きから睡眠を記録します。「睡眠」タブで記録を始め、スマホを枕元に置いておくと、翌朝は昨夜の記録を、レポートでは最大90日分を振り返れます。
レポートには睡眠スコア、深い睡眠・浅い睡眠・REM・覚醒の割合、呼吸の数値が並びますが、どれもスマホの動きから計算した推定値で、アプリの中でも「推定」と表示しています。Snoraは医療機器ではなく、病気の診断や治療、モニタリングは行いません。この記事で見てきたとおり、一晩の数字より何日分かの流れを見るのがおすすめです。
睡眠の記録と最大90日間のレポートは無料で、90日を超える記録とAI睡眠コーチはSnora Plusの機能です。
よくある質問
睡眠アプリの深い睡眠の時間は正確ですか?
あくまで推定値です。深い睡眠やREM睡眠は、医療機関の検査では主に脳波と眼球の動きで判定しますが、スマホのアプリは脳波を測っていません。体の動きなどから推定しているので、一晩ごとの細かな増減よりも、何日分かの傾向を見るほうが参考になります。
スマホを枕元に置くだけで睡眠を測れますか?
体の動きをもとにした大まかな記録はできます。寝た時刻と起きた時刻、夜の動きの多さなどはつかみやすい一方、じっとしたまま起きている時間は眠っていると数えられやすく、睡眠時間が長めに出ることがあります。毎晩同じ場所に置くと、日ごとの比較がしやすくなります。
睡眠アプリで睡眠時無呼吸症候群などがわかりますか?
わかりません。米国睡眠医学会は、一般向けの睡眠計測技術を、十分な検証と承認がないまま睡眠障害の診断や治療に使うことはできないとしています。大きないびきや呼吸の停止を指摘された、日中の強い眠気が続くといった場合は、医療機関に相談してください。
睡眠スコアが低い日は気にしたほうがいいですか?
一晩だけの低いスコアは、あまり気にしなくて大丈夫です。スコアはアプリ独自の計算による推定で、置き場所やその夜の条件でも変わります。何日も続けて低い、体の感覚としても眠れていないと感じる、といった場合に生活習慣を見直すきっかけとして使うのがおすすめです。